第290章

 望月琛は気づいていた。前田南の心には、まだしこりが残っていると。

 だからこそ、彼は自ら提案した。

「それなら、体外受精を試してみないか?」

 前田南が頷こうとした矢先、携帯の着信音が空気を裂いた。

「前田さん、大変です! 娘さんが何者かに連れ去られました……!」

 その瞬間、前田南の顔色が変わった。

 彼女と望月琛は、すぐさま病院へと急行した。

 真っ先に防犯カメラの映像を確認しようとしたが、ククが失踪した前後の記録は、すべて破損していたのだ……。

          ***

 一方、大塚雪見は腕の中で昏々と眠るククを見下ろし、その瞳に陰惨な光を宿していた。

「前田南...

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